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【18日目】250円の風呂【静岡県熱海市】

湯河原海浜公園で起床!


寝袋から這い出ると、すぐ隣におじいちゃんが座っていた

とりあえず挨拶だ

「おはようございます~」

「おう、おはよう!どっから来たんだ?」

おじいちゃんは気さくにおしゃべりしてくれた

こんな怪しい寝袋に近づいてくれてありがとう

少し話していると、スピーカーからラジオ体操が流れてきた

15人ほどの人が集まって体操している

僕もしっかり参加した

荷物を片付けさあ出発!ってときにポツポツと雨が降ってきた

それほど強くはなかったので、荷物にカバーを被せて走り出す

少し走ると湯河原町から熱海市へ入り、ついに静岡県に突入だ

しかしこの伊豆半島、町と町の間は激しい峠道になっている

どこの半島もこんな感じなのか

雨降り+キツイ坂道ですぐにバテてしまい、マンションの前の駐車場で少し休もうとしたそのときだった

バキッ

「あっ!」

自転車から降りようとした足がドリンクホルダーにあたり、その衝撃で壊れてしまったのだ

なんてこった、さすが中国製の安物だ

うーん困った、なんとか直せないかと思案していると

「何か必要なものはあるかい?」

マンションの住人と思われる、エプロン姿のおねいさんが声をかけてくれたのだ

「コイツがちょっと、壊れちゃって」

「ああそうかい、ちょっと待ってて、なんか持ってくるから」

なんて親切な方なんだ

待っている間にアロンアルファで接着を試みたが、干からびてまったく出てこなかった

「お待ちどうさま、これでどうかしらねぇ」

おねいさんはビニールひもと、温かいほうじ茶、それにいくつかの食料まで持ってきてくれていた

「いいんですか?こんなにいただいちゃって」

「いいのいいの、持ってって!日本一周なんてうらやましいわ、私もやりたかった~」

おねいさんが若い頃は、よく仕事終わりに夜行列車で地方の山まで行き、一人登山を楽しんでいたという

「アウトドアは好きなんだけど、元々身体が強くなくてね、病気がちになってからはどこにも行けなくなっちゃったのよ」

健康に勝る宝はないのだと、改めて痛感させられる

おねいさんは真情を吐露するように

「いいな~、私は人間より自然が好きだから、自転車で日本一周してみたかったな~楽しそうだな~」

と言っていた

やりたいことがあっても、できない人がいる

やりたいことができる「今の自分」があるというのは、この上ない幸運なことのように思えた

「この先はもう少し坂道が続くけど、そのあとは熱海の町まで下りだから、気をつけて行ってらっしゃい!」

おねいさんは、僕の姿が見えなくなるまで、雨降りの中で傘もささずに、手を振ってくれていた

本当に、ありがとうございました

おねいさんの想いを背中に乗せて、日本一周、やり遂げます


おねいさんの言う通り、しばらく上ったらあとは長ーい下りが続いた

銃弾のような雨水が顔面に打ち付ける

「イデデデデ!」

たまらず屋根のあるところに避難した

長浜海浜公園というところに売店があり、おいしそうなみかんが格安で売られている


これ買ってみた(300円)

みかんの皮を柔らかく煮詰めて、砂糖でコーティングしたものだ

食べてみると、砂糖たっぷりで甘いのだが、ほんのりと皮の苦みが舌に残る

苦みのおかげでバクバクいけてしまうのだ

雨は次第に強くなり、とても走る気分にはなれなかった

いつ止むかわからない雨を見つめていると、赤いジャンパーを着た、明るい声のおねいさんが声をかけてくれた

「これからどこ行くの?」

「とりあえず伊豆半島をグルッと回ります」

「ヤァダっ!」

「寝るときはどうするの?」

「公園でテント張って寝ますよ」

「ヤァダっ!」

面白いリアクションだ

それからおねいさんは、自身のこれまでの人生を語ってくれた

樺太島で生まれたおねいさんは、小学校卒業までをそこで過ごした

冬の通学路は雪で覆われ、スキー板を履いて登校したという

成人してからは結婚した相手の地元で暮らすものの、飽きっぽい性格らしく、2度の離婚を経験した

49歳で再び人生のパートナーと出会うが、相手が脳梗塞を患い、後遺症で会話すらできなくなってしまったそうだ

波瀾万丈の人生を送り、現在84歳となったおねいさんは

「今がとっても幸せだし、後悔なんて一つもないよ」

と笑顔で言ってのけた

「失敗したなとその時は思ってもね、後になってから、あれも必要なことだったんだってきづくのさ」

う~む、とても深い話を聞かせていただいた


おねいさんと話しているうちに雨があがったので、別れを告げて走り始めた

すると湯気がもくもくと立ち込める建物を見つけた

「汐留の湯」という公衆浴場だった

中へ入ると、入口のすぐ隣に番台のおねいさんが座っていた

「いくらで入れますか?」

「250円だよ」

安っ!

さっそく風呂道具を自転車から持ってきて料金を支払う

ハンドタオルも無料で貸してくれた

脱衣所には九つの鍵つきロッカーと、鍵のかからない木造のロッカーが設置されていた

素っ裸になりいよいよ浴室へ向かう

中央に大きな浴槽が一つあり、その周りを洗い場が囲んでいる

洗い場といっても、シャワーや温度調節なんて女々しいものはついていない

プッシュ式の熱い湯が出る蛇口のみだ

天井を見ると水滴がびっしりついており、ぼたぼたと体に降ってきて冷たい

湯船の温度は42℃はありそうだ

熱めの湯にゆっくり肩までつかると、全身の疲れが溶け出していく

いや~気持ち良かった

恐らくここに観光客がくることは稀だろうな

体もあったまったところで服を着て外に出る

すると店の前には屋根つきのベンチがあるではないか

ここに寝られたら大助かりだな~

交渉してみよう

「実はまだ寝る場所を決めていなくて、そこのベンチを一晩貸していただけると助かるんですけど」

「いいけど、寒いと思うわよ、それに警察に声をかけられるかも」

「何があっても自分で責任を取りますので」

「そう、じゃあ好きにしなさい」

初めての野宿交渉は成功した

さっそく寝床をつくって寝る!

お休み!



#今日の一曲

島倉千代子
「人生いろいろ」
作詞:中山大三郎 作曲:浜口庫之助

“死んでしまおうなんて 
悩んだりしたわ
バラもコスモスたちも 
枯れておしまいと

髪を短くしたり 
強く小指をかんだり
自分ばかり責めて 
泣いてすごしたわ

ねぇおかしいでしょ 若いころ
ねぇ滑稽(こっけい)でしょ 若いころ
笑いばなしに 涙がいっぱい
涙の中に 若さがいっぱい

人生いろいろ 男もいろいろ
女だっていろいろ 咲き乱れるの”



人の数だけ歴史あり

僕の人生を一冊のノートにまとめたら、なるべく分厚いノートになるよう、生きていきたい


本日の走行距離
30キロ


本日の使用金額
870円


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コメント

フミオと申します

はじめまして、私はフミオという者です。

実は私も今年自転車で日本一周をしようと準備しており、先に日本一周に挑戦をしているヒッキーさんを見つけコメントさせていただきました。

日本一周は西日本から周るのですね?ヒッキーさんのブログのタイトル通り
各地の絶景や美食をどんどん見て食べて楽しんで下さい。


私は自宅の愛知県から北海道を含めて東日本から巡る予定です、お互いに良い旅になると良いですね。応援しています。

フミオさんへ

旅に出ると毎日いろんなことが起こるので、本当に充実した気持ちになります

悪天候やキツイ上り坂、その他様々なトラブルもありますが、フミオさんを応援している人達のことを思い出せば、乗り越えていけると思います

お互いきっと、良い旅になりますよ

最高の思い出をつくりましょう!

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プロフィール

hickey

Author:hickey
1988年生まれ

20代の終わりに最高の思い出を作りたくて日本一周を決意。

安全第一で行ってきます。

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